貞子の量子力学(後編)

今度は応用です。


壁に厚さがある場合
今度は井戸ではなく、高い壁に貞子が囲まれているとしましょう。
壁ですから厚さがあります。
前編で「貞子が染み出す」という効果の話をしましたが、今度はその染み出した先に貞子を拘束するものは何もなくなる。
そして、貞子大暴走☆


この貞子と井戸の関係は何の役に立っているのか?
実は、結晶表面の原子配列の観察などの
非常に小さなものを見ることに役立っています。
その原理を簡単に説明します。

原子中の電子は各々原子核の束縛を受けて、原子核とある程度の距離を保とうとします。
これは原子が規則正しく並んだ結晶中でも同じです。
ある電子が今現在どこにいるのか?という特定は出来ません。
ただし、ある位置Xにいる確率を求めることはできる。
したがって電子の存在する確率がある程度高い所を「電子の軌道」として、雲のような形で表現するのが一般的です。
結晶ではこの電子の雲が延々と繋がった状態(その程度は原子の種類による)になっている。
図か何かあればいいんですが…想像できますか?


この延々と繋がった電子雲に他の電子雲を近づけていくと、非常にその二つが近づいた地点で一方の電子の雲からもう一方の電子の雲へ、電子がジャンプします。
電子雲同士の距離が小さくなれば小さくなるほど、電子がジャンプする確率は高くなります、
電子の移動=電流なので一方の電子雲を微量の電流を感知できる電極が担えば、2つの電子雲の距離を微小な電流として観測することが可能です。
電極が一定の電流を感知するように電極を操作すれば、その電極の軌跡は結晶表面の凹凸を表すことになる。
この原理で使った顕微鏡を走査トンネル顕微鏡といいます。


この電子ジャンプの過程をエネルギー的に表したのが前述の井戸(もしくは壁)と貞子の関係なのです。
貞子は原子核の束縛という井戸に入った1つの電子です。
ある電子雲から他の電子雲へ電子がジャンプするには、電子雲がない場所を電子が通らなければなりません。
 電子雲は「電子が原子核の束縛を受けつつも自由に動ける領域」でもあるので、電子雲がない場所を通るということは「電子が原子核の束縛を切るエネルギーを持っていなければならない。」ことを意味しているように思える。
この束縛エネルギーが「井戸(または壁)の高さ」にあたるのですが、貞子は井戸の壁を上らなくても染み出すことができましたね?
 つまり、電子は束縛エネルギー未満のエネルギーで電子雲から電子雲へジャンプできる(ただし接近した場合)。
これを「電子のトンネル効果」といい、前述の走査トンネル顕微鏡の「トンネル」はこのトンネル効果に由来します。


今回は話がやたら難しく&長くなってしまいましたね。
反省。
できるだけ専門用語を使わないように説明したつもりなんですが、言葉だけで説明するのは正直かなりシンドイ内容でした。
質問はコメントの方へお願いします☆