貞子の量子力学(前編)

私事ですが、お化け屋敷、肝試し、百物語etcは大の苦手です。
お化け屋敷で50mのタイムを計れば、6秒前半で走れる気がします。


今回は量子力学の特異な性質を『リング』の「貞子」を使って紹介します。
(『リング』は続編が次々と出版され、海外でもリメイク版として映画化され、「貞子」という亡霊の名前は緒方貞子さんと同じくらい世界的に有名になったのだと私は勝手に信じております。)


そもそもニュートン力学量子力学の違いは何か?
自分が理解している範囲で、簡単に言ってしまうとこんな感じです。

もうちょっとわかりやすく言うと、

  • 前者はある時間における物体の位置や速度を求める事ができるが、後者はその扱う微粒子においてそれができずある時間における粒子がその位置にいるであろう確率を求める事ができる。
  • 前者において物体は0〜光速まで様々な速さを持ちうるが、後者ではそれが許されない。

まぁこの辺はわからない人は飛ばして構いませんw
このわかりにくい性質を貞子を使って考えて見ましょう〜。


井戸の壁の高さ∞の場合
まず貞子を井戸の中に閉じ込めたとします。
その井戸は底面の直径3m、高さを∞としましょう。
貞子はこの井戸の底から外へ出られるでしょうか???
もちろん、答えはNOです!
井戸の壁面や底に外へ出られるような細工が施されていない限り、貞子は外へは出られません。
「呪いのビデオ」を観ても、出てきません。
量子力学的に井戸の外での貞子存在確率は0となり、井戸の中の貞子存在確率は0でない数値となります。
その井戸の中の貞子存在確率を全て合計すると1になります。
ここまでは難しくないですね〜。
さて、この井戸の中の確率から、ちょっと変な結果が出てきます。
井戸の高さは∞としたので、外からは井戸のどこに貞子がいるのかはわかりません。
底にいるかもしれないし、井戸の壁を登っているかもしれない…
貞子が仮に井戸の底に留まっているとして、ある井戸の底一点に関して貞子の人数の平均をとるとどうなるか?
この辺りの知識は高校の数学の範囲ですね。
(その地点の貞子の存在確率)×(貞子の人数)=
を求めれば良い。
そして結果は0.何人という結果となり、整数の値にはならない。


井戸の壁の高さが有限の場合
この場合はどうなるでしょう?
例えば、井戸の深さが100mもあったとしましょう。
普通の人間ではよじ登ってくることはまずできないでしょう。
貞子にもよじ登る能力はないとしましょう。
ところが、それでも量子力学では井戸の外の貞子存在確率は0にはなりません。
ここが量子力学ニュートン力学と異なる所です。
そして、皆さんが「えっ?」と思うところでしょう。
どうしてこのようなことになるのか?
それは量子力学では物体は波としての性質も持つからです。
井戸の底で大声を出しても、井戸が十分に深かった場合外に声は届きません。
しかし、声の音波としての性質は少なくとも外の空気へは影響を及ぼします。
つまり壁の高さが有限である以上、貞子があなたの所へ来る可能性は0ではなくなる、つまり確率分布で観ると貞子が染み出してきているように見えるのです。きっとくる〜♪


後編では、この「貞子染み出し」の応用について書いていきます。
しばしお待ちあれ。